2024年オーストラリア旅行記 ①

へップパーン・スプリングス デビットのガーデンツアー

 

ユウキと私は20242月にオーストラリアを訪れました。この旅行は私たちにとって非常に興味深いものでした。なぜなら、パーマカルチャーを本格的に学び実践し始めてから初めてのオーストラリアへの旅だったからです。コロナ禍の時期にオンラインで世界のさまざまな地域で多くの人々がパーマカルチャーの原則を用いて生活環境を改善する様子を見てきました。自分たちの庭で食べ物を育て、居住空間をより環境に適したものに改善し、その際に直面する問題を知りそれを克服している様子を見てきました。パーマカルチャーの原則が実際の生活においてどのように組み合わさるのか、長年パーマカルチャーを実践している人々の技術をどのように私たちが応用できるのかを知りたいと思っていました。

この5年ぶりになるオーストラリへの旅行のテーマはパーマカルチャーの実践を見ることでした。特に、私自身デビット・ホルムグレン主催のパーマカルチャーデザインコース(PDC)をこの旅行のすぐ後から始める予定だったため、直接デビッドとパートナーのスー・デネットにお会いすることをまず優先しました。私たちはメリオドーラのデビッドとスーの家と庭のツアーから始められるように旅行の日程を組みました。彼らは20年以上にわたり、毎月第一日曜日にこのツアーを開催しています。彼らの家はメルボルン空港から車で約2時間の小さな田舎町、ヘプバーン・スプリングスの端に位置しています。

ユウキと私は2004年からメルボルンで約5年間一緒に生活していて、休暇の度にヘプバーン・スプリングスから車で10分のデイルズフォードに滞在していました。当時はパーマカルチャーについてはほとんど知りませんでしたが、デイルズフォード地域にはいつも魅力を感じていました。美味しいコーヒーショップや当時は珍しかった天然酵母のパン屋があり、地元の野菜が買えるファーマーズマーケットが開催されています。デイルズフォードではホリデー用の一軒家を借りることが容易にできるため、素敵にリノベーションされた古い家に宿泊できて、当時メルボルンの私たちの家をどのようにリノベーションするかのアイデアも得られました。私たちの良く知る地域にデビットの家があったことが旅の準備の段階で驚きでした。

日本からメルボルンに到着しそのままレンタカーでデイルズフォードに向かいました。最初のディナーはデイルズフォードのメインストリートにあるパブで大きなチキン・パルミジャーナとサラダ、チップスを楽しみました。そこから数分のホテル・フランゴスに宿泊しました。宿泊先にはレストランとカフェが1階にあり、2階にはバスルーム付きの部屋がありました。宿泊費にカフェでの朝食が含まれていましたが、朝食メニューは非常に多くの選択肢があり、うれしいことにメニューから好きなものを選べるとのことでした。私は天然酵母パンのトーストに卵、ベーコン、トマト、マッシュルーム、サラダ、カプチーノを注文しました。お腹がいっぱいになり、昼食はほとんど必要ありませんでした。

 

朝食の後に、デビッドとスーの家、メリオドーラに向かい、家と庭のツアーに参加しました。彼らの家は町のすぐ近くにあります。家のドライブウェイに到着すると、デビッドが裸足で出迎えてくれました。その後、彼は自分とスーが可能な限り裸足で過ごすことを意識していると教えてくれました。これは裸足でいることがもたらす多くの利点があるからです。家と庭のツアーには合計20人の参加者がいて、午前中に家のツアー、午後に庭のツアーが行われました。スーは午前中のセッションと午後のセッションの両方で、庭でとれたフルーツを使った美味しいケーキと冷たい飲み物を提供してくれました。

ツアーの始めにデビッドは1980年代初頭に家族の家を探す旅について語りました。彼は、パーマカルチャーのコンサルティングビジネスを始めたばかりで、クライアントに近い場所に住むことができると考え、ヘプバーン・スプリングスに住むことを選びました。最初は家をリノベーションして住むつもりでしたが、見た家の多くが北を向いておらず、冬の日差しを最大限に利用できないことに気づきました。ヘプバーン・スプリングスは冬が非常に寒い地域であるため、最終的には土地を購入し、そこに家を建てることに決めました。

40年前のその土地が何もない土地で、白紙のキャンバスのようだった写真を見るのは非常に驚くべきことで、今日の美しい家と周囲の豊かな植生と比較するのは興味深いことでした。デビッドは、家を建てる際にどの材料や技術を使うかについての意思決定のプロセスを説明してくれました。デビッドとスーは、家を建てるために掘り出した土や粘土を使って泥レンガを作ることを選びました。木材は、製材所で働く友人の協力を得て、地元で調達しました。 

家の北側には温室があり、温室の外にはブドウの木があるパーゴラがあります。このブドウの木は、夏の暑い日差しを遮り、冬と春には葉を落とした後に日光を温室に入りやすくします。その結果、家の北側になるキッチン、ダイニングルーム、リビングルームをを暖めます。家の北向きの壁は温室の上に伸びており、その壁の上部にある窓から低い冬の日差しが入り、前の部屋の反対側の泥レンガの壁を暖めます。

 

 私たちが訪れたのは2月初旬で、オーストラリアでは最も暑い時期で外の気温は36度でした。それにもかかわらず、キッチンとリビングルームの泥レンガの床と壁はとても涼しく、温室の外にある豊かなブドウの木のおかげで完全に日差しから保護されていました。エアコンや電気ファンは使用しておらず、それが必要なかったのです。

デビッドの説明で印象に残っているのは、家の快適さと便利さのおかげで、彼らは家で食材を育てたり、調理したり、保存したり、またホームオフィスで働いたりするために多くの時間を過ごせるということです。また、庭に出たり、長い散歩に行く機会も多くあります。一方で、典型的な家庭では大人は、オフィスに仕事のために運転して向かい、別のビル(レストランやカフェなど)に食事に行き、さらにジムのような別の建物で運動する必要があるかもしれません。これにより、多くのエネルギーが、人々が一つの建物から別の建物へと移動するために、空いている時間が多い都市の無数の建物を作ることに費やされますが、自分の家は1日の多くの時間は空いていて使用されていないという結果になります。

さらに彼らはこの建物の材料を身近に手に入るものを使用したため、メンテナンスも自分たちでできます。スーはリビングルームの床にある泥レンガを修理中であることを話しました。泥レンガは、粘土、水、牛の糞を混ぜて作られていたツアーの前日にそれを修復したことを説明してくれました。

スーはデビッドが毎朝目覚めるとすぐに火を入れるキッチン用の薪ストーブを見せてくれました。これは料理のための主要な熱源です。ストーブの煙突は建物の外に延びており、夏にキッチンが暑くなるのを防ぎます。ストーブは料理をできるだけ効率的にするよう設計されています。非常に暑い日には薪ストーブの代わりに使う小さなガスバーナーも持っています。

彼らが庭で生産する大量の食材の量に対して、非常に小さな冷蔵庫を持っています。通常冷蔵庫に入る食材の多くは、クールキャビネットに保存されています。クールキャビネットは、床から天井までの普通の見た目のキャビネットで、ワイヤーの引き出しがあります。床には通気口があり、外から家の下を通るシャフトを通じて冷却された空気が通ります。クールキャビネットの中には卵や大量の野菜が入っていました。

昼食の後、庭とその周辺のツアーでした。スーとデビッドは家の敷地内の庭で何トンもの果物と野菜を生産しています。家の前には野菜畑があり、そのほかの敷地の大部分は果樹が広がっています。イチジク、リンゴ、プラム、クルミ、クリ、フェイジョアの木などたくさんの種類があります。デビッドは果樹の生産性を向上させるための努力や、果物をついばむオーストラリア特有の鳥コカトゥーやギャラに対処する方法について話しました。鳥の被害を防ぐためにネットを使っています。丁度いくつかのプラムが木で熟していて、デビッドの勧めで、私たちは皆でジューシーな果物を摘んで食べることができました。

 

敷地のデザインの一環としてデビッドの家以外に2つの住宅が建てられ、そこに暮らす人々も敷地内の庭や農作業の手伝いをしています。敷地の端には小川が流れており、デビッドとスーはこの敷地を手に入れてから土地の管理に力を入れ、良好な状態を保つことに注力してきました。150年前はこの地域はゴールドラッシュで栄え多くの入植者が家を建て生活をしていました。当時畑を囲うのに利用されたのは棘のあるブラックベリーの木で羊が逃げる防ぐのに有用でした。デビットの敷地の前のオーナーもブラックベリーの木を植え長年放置された結果、彼らがこの敷地を手に入れた時にはブラックベリーが手に負えないほどに広がっていたそうです。ここ数十年、デビッドとスーは、ヤギを使ってブラックベリーの木を食べさせ、このエリアを維持しています。ブラックベリーを絶やすために多大な労力が必要だったようですが、今では小川のそばを歩くにはとてもリラックスできる平和な場所です。

庭を長い時間歩いた後、私たちは家に戻り、スーが私たちにお茶とケーキを出してくれ、全員でお別れの挨拶をしました。参加者の一人が、私の日本のパーマカルチャーコースの友人ソータと友達であることがわかり、嬉しい偶然の出来事がありました。パーマカルチャーを実践している人々は他のパーマカルチャーを実践している人々に非常に興味があると思いますし、いつかお互いに会うことになると思います。

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